高齢出産で気になる出生前診断のリスクや費用は?

一般的に高齢出産は「リスクが高い」と不安な点が強調されがちです。
もちろんメリットもあります。何歳でも妊娠・出産は不安はつきものです。
今回は、特に35歳以上の高齢出産で気になる方も多い、出生前診断について、編集部が、出生前診断を受けた経験者の方に検査を受けた時のこと「古賀ウイメンズクリニック」院長の古賀 文敏先生と副院長の古賀 剛先生に、胎児診断についてお話をおうかがいしました。

出生前診断は欧米や日本以外では普及している

出生前診断とは欧米そして日本以外のアジアの国々では、妊娠中にお母さんだけでなく胎児についてもその異常についてしっかり診断する胎児診断(出生前診断)が普及しており、法的整備を含めた社会のサポート体制も整ってきています。

しかし日本では、一般の妊婦健診で先天異常を診断するメニューのある施設はほとんどありません。

出生前診断については命の選別につながるという批判もあって、タブー視されて議論が深まらず、一般の方々に正確な情報が伝わらないまま今日に至っています。

診断を受けるか受けないかを判断するためには、検査に関する内容、リスク、費用など情報収集を十分に行うことが大切です。

まずは、胎児診断を受けた方ご経験をお持ちのお二人にきっかけなどお話をお伺いしました。

胎児診断を受けた方に聞きました

ーA子さんの場合ー

不妊治療の末に、38歳で第2子を出産しました。

きっかけは、夫との話し合いで

「僕たちが元気なうちはいいけど、将来的に長女に負担がかかるんじゃないか」

と母体血清マーカーテストを受けることにしました。

私は、不妊治療を頑張ってようやく授かったので、絶対産みたいと思っていたのでもし染色体異常の可能性が高いという結果が出た場合にどうするかという結論は出せないままでした。

ーB子さんの場合ー

39歳で第一子を妊娠し、出産しました。

年齢のことがあったので、妊娠がわかってすぐに、NIPT(新型出生前診断)をうけることにしました。

検査で分かる範囲は、染色体疾患のみで、その他にも先天性の疾患を持って生まれてくる可能性もあること、出産後に病気になることもあるいし、検査でのリスクもあるなど病院で2回のカウンセリングをうけました。

リスクも含め理解したうえで、もし陽性だったらどうするかを夫と何度も話し合いました。

夫は、

「子育てはどうしても母親に負担がかかることが多くなってしまう。

僕の仕事が忙しいなかで、しっかり支えられるか分からない」

検査に反対でしたのですごく、すごく悩みました。

このように、出生前検査を受けるには、年齢や費用など以外に、リスクも含め悩む方が多いのが当たり前です。

そのことをふまえ、古賀先生にお話をおうかがいしました。

九州初の「胎児診断外来」

当クリニックでは、2014年6月から胎児診断(出生前診断)とカウンセリングを行っています。

胎児診断を行う専門施設は九州では当クリニックが先駆けで、全国的に見てもまだ数えるほどしかありません。

私はご自身の年齢や遺伝などさまざまな理由で妊娠や胎児に不安を感じる方の気持ちに寄り添いたい、胎児診断によって救える命や心があるという思いから開設に踏み切り、この1年半でほぼ1000人の妊婦さんを診察してきました。

一般的に先天異常を持つ赤ちゃんが生まれる割合は、新生児全体の約3~4%と言われています。

先天性疾患の1/4が染色体異常で、妊婦さんの年齢が上がるほど染色体異常のリスクが増加します。

日本では妊婦さんの4人に1人は35才以上という妊娠の高齢化が進んでいます。

そのため、当クリニックに診察に来られる方も大半が比較的年齢の高い方です。

胎児診断の検査法

胎児診断では、胎児に問題がないかどうかを検査・診断します。

診察に際しては丁寧なカウンセリングを行い、ご夫婦でも十分話し合っていただくようにお話しています。

胎児診断にはいくつかの方法があります。

特に胎児の染色体異常の診断については、超音波検査や血清マーカー検査などでスクリーニングを行い、さらに絨毛検査や羊水検査で確定診断します。

超音波検査と血清マーカーを組み合わせたスクリーニングでは、検出率約95%で染色体異常のリスクを判定できます。

リスクが高い場合は、確定診断のために絨毛検査や羊水検査が必要です。

これらの検査はお腹から針を刺して絨毛や羊水を採取するため、破水や流産などのリスクを伴います。

当クリニックは妊娠初期に診断を確定できる絨毛検査についても日本において安全に検査できる数少ない施設の一つです。

また、超音波検査(詳細な赤ちゃんの観察)によって染色体異常だけでなくその他の先天性疾患(形態異常)の診断を行います。

胎児診断でわかること。環境整備の必要性。

日本では2013年に新型出生前診断(NIPT)が導入されて注目を浴びています。

母体の血液検査で染色体異常、特にダウン症候群については99%の確率で検出できます。

この検査は、母体や胎児への負担が少ない検査法ですが、未だ臨床研究の段階で、対象は染色体異常の可能性が高い方に限られ、染色体異常の限られた疾患のみしか検出できないこと、費用が高額で確定診断ではないことは知っておいてほしいと思います。

日本において、出生前診断を取り巻く環境は混沌としています。

それを必要とする妊婦さんに正しい情報が伝わっていない状況です。

きちんとした知識を持ち、夫婦でしっかり話し合い、適切なカウンセリングや診断を受けられる環境が整うことを願っています。

特別セミナーが開催

胎児診断セミナー

2015年12月3日、古賀文敏ウイメンズクリニックにおいて、「新しい時代の出生前診断」とのテーマで、胎児医療分野の先駆者であり、世界的現状にも精通された臨床遺伝指導医の斎藤仲道(さいとう なかみち)先生の特別セミナーが開催されました。

出生前診断の知識まとめ

胎児に先天性の病気、奇形、染色体異常がないかどうかを調べる検査の総称が「出生前診断」です。

35歳以上の高齢出産の場合、病院から検査について案内されるケースもあります。

妊娠初期からスクリーニング検査を行い、異常が見つかった場合、高度な検査をして確定診断を行います。

スクリーニング検査の対象と費用
超音波検査 母体血清マーカー検査 新型出生前診断 NIPT
検査の対象 21トリソミー

18トリソミー

21トリソミー

18トリソミー

神経管閉鎖不全症

21トリソミー

18トリソミー

13トリソミー

検査時期 11~13週 15~18週 10週以降
感度目安 83% 80% 99%
検査費用の目安 1~3万円 1~3万円 20万円前後

胎児の首のむくみなどを見る「超音波検査」染色体異常の確率を調べる「母体血清マーカーテスト」の他、「NIPT」と呼ばれる新型出生前診断があります。

NIPTは採血だけで、21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーの可能性について知ることができる検査です。

しかしNIPTを受けるために下記のような条件があります。

・妊婦が出産予定日に35歳以上である
・妊娠10~18週目の期間内である
・妊婦または配偶者に染色体異常が見られる
・過去に染色体異常を持った胎児を妊娠または出産した経験がある

確定診断の内容と費用

確定診断として行われるのは、1つが妊婦さんのお腹に針を刺して胎盤から絨毛を採取する「絨毛検査」。

もう一つは、母体のお腹に針を刺し、採取した羊水の成分から胎児の染色体異常や遺伝子異常がないかを知らべる「羊水検査」です。

絨毛検査 羊水検査
検査の対象 染色体疾患全般 染色体疾患全般
検査時期 11~14週 15~16週以降
感度目安 100% 100%
検査費用の目安 10~20万円 10~20万円
出生前診断はパートナーとしっかり話し合い、信頼のおける専門医に相談しましょう

出生前診断を受けるかどうかの判断や、検査結果の受け止め方も人それそれですが、大事な事はパートナーとしっかり話しあうこと。

そして、正しい知識を持つことも大事ですが、まずは夫婦そろって信頼のおける専門の医師とよく相談することではないでしょうか。

お話を聞いたのはこの方

医療法人古賀文敏ウイメンズクリニック

古賀先生
院長 古賀 文敏 先生
大分医科大学(現大分大学)卒業後、久留米大学産婦人科学教室入局。久留米大学病院、国立小倉病院を経て、聖マリア病院新生児センターにて出産後の母子ケアを学ぶ。1999年1月 国立小倉病院成育センター周産期病棟医長、生殖医療部門立ち上げに関わる。2004年4月 久留米大学病院にて不妊・内分泌部門主任として多くの不妊女性の治療にあたる。2007年5月 福岡市中央区大名 サウスサイドテラス4Fに「古賀文敏ウイメンズクリニック」開院。2014年6月 中央区天神2丁目 天神ルーチェ5Fに移転・拡張。
古賀剛先生
副院長 古賀 剛 先生
九州大学経済学部卒業、経済学士。エネルギー会社勤務の後、地球環境への問題意識から大分大学医学部に再入学。医学部在学中に長男の出産をきっかけに産婦人科医を目指す。九州大学病院周産母子センターで新生児医療を含む周産期医療の臨床に携る。九州大学大学院において胎児医学を専攻し、シドニー大学付属病院に留学、出生前診断の臨床研究を行う。英国 Fetal Medicine Foundation 胎児診断資格者であり、これまで約4000例の妊娠分娩管理に携り現職に至る。

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