株式会社資生堂 日本事業本部 美容統括部長 松本聖子さん

美のスペシャリスト2人に聞いた!働く女性の子育てと仕事の両立

働く女性
妊活で必要な栄養を気にする働く女性
女性の社会進出が進み、働きながら家事・妊活・育児・介護などとの「両立」を求められるようになってきました。

でも、働く現代女性をとりまく環境は厳しく、うまくやっていけないと悩んでいる方も多いかもしれません。
編集部では、女性が「私らしく生きる」ために、何をどう、どのタイミングで考えていけばよいのか、輝く女性たちにインタビューしてヒントをお聞きしたいと思います。

今回は、国内の社員の8割以上が女性の資生堂で、女性活躍の取り組みや家事や育児との両立などについてアドバイスをお聞きしました。

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子育てと仕事の両立を支えれくれたのは?

お一人目は、福岡県久留米市の化粧品店で接客を行う美容部員「ビューティーコンサルタント」からスタート。
2015年には国内1万人の美容部員を束ねる立ち場である、日本事業本部で美容統括部長になられた、松本聖子さんにお聞きしました。
株式会社資生堂 日本事業本部 美容統括部長 松本聖子さん
 - 人生の転機―それは、生涯で必ず一度は訪れるもの -

私の場合は、50歳のときでした。
20代の4年間を除いてずっと福岡で働いてきたのに、東京の本社人事部への異動の打診があったのです。
地元を離れて、まったく畑違いの部署での挑戦。

子育てと両立しながら必死で仕事をしてきて、会社人生も終盤にさしかかり、正直、もういいんじゃないかと考えました。
そんなとき、夫は「やればいいじゃない」と言ってくれ、当時高1の娘が「私も一緒に行くよ」と背中を押してくれたのです。

悩みながら、迷いながらも必死でやってきた姿を見てきてくれたんだなと思いました。

子育てと仕事の両立に悩んでいる女性はたくさんいる

資生堂は女性社員比率が高いため、1990年から子どもが3歳になるまで育児休業が取れるなど、制度は他の企業より進んでいました。
夫や親は仕事を続けることを応援し、協力してくれました。

そんな状況にあった私ですら、夕方から売り場が忙しい仕事柄、保育園のお迎えもままならず、仕事に行こうとすると泣く娘を置いてまで働かなきゃいけないのだろうかと、退職を考えた時期もあります。

それでも、お客様に必要とされている、ここに私の居場所があるんだと感じたからこそ、続けてこられました。

大変な時期をどう乗り切ったのか

借りられる助けは全部借りました。家族はもちろん、行政や友人の力も。
黙っていても、誰も手を差し伸べてくれません。

1人で抱え込まずに周囲を巻き込むことが大切です。
1日は24時間しかなく、あれもこれもはできません。

私は、帰宅後に子どもと一緒に過ごす時間を第一にして、家事や自分自身のことには優先順位をつけ、どうにでもなることは後回しにしました。

限界を決めないで、ぜひ挑戦してほしい

人生は一度きり与えられたチャンスや新しいことに、まずチャレンジしてみたらいいと思います。
女性は、自分が置かれた環境や周囲の反応を冷静に見て、足踏みしてしまいがち。

だけど、やってみれば後から環境は必ずついてくる。何とかなるんです。

年齢がとか、家族がとか、理由をつけて自分で限界を決めないで、ぜひ挑戦してほしい。
つらいことも大変なこともあるでしょう。

長くは続かず、必ず時間が解決してくれます。通過点として受け入れたら、次の一歩は楽になります。

岐路に立ったとき、力になるのは尊敬できる人の存在です。
私自身は、新たな環境の中で葛藤していたとき、BC時代の2つ上の先輩が国内外で活躍するメーキャップアーティストを目指して挑戦する姿に、刺激されました。

人事の知識も経験もありませんでしたが、子育てで感じたことを生かし、制度改定に取り組んだことで、今の立場があると思っています。
働く女性の仕事と家事、子育ての両立

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1人で悩まないで、周囲の人に相談して。

資生堂の津田さん。仕事と子育ての両立お二人目は、全国に約1万人いる資生堂のビューティーコンサルタント(美容部員、BC)の代表として選抜されたビューティートップスペシャリストの津田浩世さん。

全国にわずか8人しかいない美のスペシャリストとして、店頭活動やセミナー講師など国内外で活躍しています。
現在は東京を中心に全国を飛び回る日々ですが、スタートは熊本の化粧品店で接客を行うBC。
25歳で結婚した後、夫の転勤や2児の子育てを経験しながらもBCとして働き続けて技術を磨き、BCの頂点まで上り詰めました。

女性の活躍推進に先進的に取り組む資生堂

国内社員の8割が女性という資生堂では、女性の活躍推進に先進的に取り組んできました。
1990年には法施行より早く育児休業制度を、91年には育児の時短勤務制度を導入。
事業所内保育所も整備し、時短を取りやすくするために代替スタッフを置く制度も作りました。

働きやすい環境を整える一方で、キャリアアップ支援にも力を入れています。
2014年には子育て中のBCも店が忙しい平日夜や土日に勤務してもらうように働き方を見直しました。

売り場が混み合う時間帯は、接客経験を積み、スキルを向上させる機会だからです。
2017年1月には女性管理職の割合が3割に達し、新たに2020年に4割にするとの目標を掲げています。

家族が背中を押してくれた

津田さんが子育てしていたのは、女性活躍推進の黎明期。
「実は、仕事を辞めようと思ったことが何度もあります」と津田さん。

出勤しようとすると、長女がお腹を壊して「嫌だ」と泣いた朝に、小児ぜんそくの長男を抱きながらテキストを広げ、翌日のセミナーの準備をした夜―。

それでも続けられたのは、メーキャップをしたお客さんに「ありがとう」と喜んでもらえるのが嬉しくて、もっとメーキャップが上手になりたいと思ったからだといいます。

2010年には、厳しい試験をクリアして資生堂内の企業大学「ビューティーアカデミー」に合格。
熊本を離れての活動となるため、入学するかどうか迷っていたとき、「やりたかったことでしょう」と家族が背中を押してくれたそうです。

現在、月に1度自宅へ戻って過ごす時間が、日々の仕事の原動力になっているといいます。

一人で悩まないで、いろんな人に相談することが大切

資生堂の津田さんとラ・シゴーニュ永山編集長。

子育てしながら働く女性は、「ここを我慢すれば乗り切れるから」と自分を犠牲にしてしまいがち。

津田さんは「一人で悩まないで、いろんな人に相談することが大切」とアドバイスしてくれました。
津田さん自身、子育てと仕事を両立するため、当時高校生だった姪にベビーシッターを頼んだり、近所の人に子どもを見てもらったりした経験があったといいます。

子どもの看病でふらふらだったときに職場の人に勧められ、1か月間の介護休暇を取ったこともあるそうです。

働くママは、どうしても子どもと接する時間が少なくなってしまいます。
「愛情は一緒にいる時間の長さではありません。
短時間でもスキンシップを大事にする、仕事の後や休みの日は全力で子どもと遊ぶなどで、しっかり愛情を注げます」と津田さん。

そこで大事なのが時間の使い方。
津田さんの場合は、八代から熊本までの1時間の電車通勤を「動く書斎」と呼んで、仕事の勉強時間に充てていたそうです。

津田さんがアカデミーに入学したのは50歳のとき。「いくつになっても可能性は広がっています。自分で狭めてしまわないで、周囲の人に相談して頼って」

今や、働き方を見直すことは、個人にとって豊かな生き方をもたらすだけでなく、企業にとっても生き残っていくための戦略とも言えます。誰もが柔軟な働き方を自由に選択でき、活躍するために。ラ・シゴーニュ編集部は、今後も様々なワークスタイルを紹介していきます。

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