不妊症の原因と高度生殖医療のことを不妊治療専門医に聞きました。
不妊の悩みを専門家に聞くインタビュー企画の第2弾。
不妊の原因や不妊治療のこと、さらに普段の生活で気を付ける事を、1995年に開院し、これまで1万人以上の方々が妊娠されました、福岡市博多区にある「蔵本ウイメンズクリニック」院長の蔵本先生に、お話をおうかがいしました。
高度生殖医療(ART)の歴史
不妊治療は、大きく「一般不妊治療」と「高度生殖医療(ART)」の2種類に分けられます。
前者には、タイミング法や人工授精、卵管鏡下卵管形成術などがあります。
後者のARTは、配偶子を人為的に操作して受精させ妊娠させる一連の生殖補助技術の総称です。
ARTの歴史を振り返ってみると、1978年に世界初の体外受精児がイギリスで誕生し、日本では83年に初めて体外受精による赤ちゃんが東北大学医学部付属病院で生まれました。
さらに89年に囲卵腔内精子注入法(顕微授精)による出生(シンガポール)、92年に卵細胞質内精子注入法(顕微授精)による出生(ベルギー)が報告されました。
一般的な治療の進め方は、まず検査を行い、不妊の原因に応じた治療を行います。原因がわからなければ、一般不妊治療からARTへとステップアップしていきます。
主なARTの歴史
- 1978年 世界初の体外受精児出生(イギリス:Edwards,Steptoe)
- 1983年 凍結受精卵(胚)による妊娠(オーストラリア)
- 1983年 日本初の体外受精児出生(東北大学)
- 1984年 配偶子卵管内移植による出生(アメリカ)
- 1989年 囲卵膣内精子注入法(顕微授精)による出生(シンガポール)
- 1992年 卵細胞質内精子注入法(顕微授精)による出生(ベルギー:Palermo)
不妊症の原因
かつて不妊症は女性に問題があると思われがちでしたが、今ではカップルの問題という認知が広まっています。
実際に不妊の原因の40%が女性、40%が男性、残り20%が双方にあるとわかってきました。
女性の卵子は生後新たに作られないのに対して、男性の精子は年齢に関係なく次々と体内で作られます。
しかし近年、男性の精子の数が減少する傾向にあり、これから男性不妊が増えていくと予想されています。
かつて無精子症の男性は子どもを持つことができませんでした。
けれど医学が発達したことで、現在は精巣から精子を採取できるようになったため、顕微授精で妊娠することも可能になりました。
これは大きな進歩です。
普段の生活で気を付けること
医療行為に頼るだけでなく、普段の生活で気を付けてほしいこともあります。
男性不妊には運動療法が効果的という臨床結果が出ています。
激しすぎる運動は生殖能力を下げることがわかっており、少し汗ばむ程度の運動(早足)がベストです。
男女ともにすすめているのは禁煙です。
また、不妊の方の半数ほどは心の病を併発するともいわれており、ストレスケアも重要だと考えています。
今はどこのクリニックでも心のケアに対する意識が高まっています。
ひとりで、もしくはカップルだけであれこれ悩まずに、ぜひ早めにクリニックで医師に相談してみてください。
お話を聞いたのはこの方
- 医療法人 蔵本ウイメンズクリニック
- 院長 蔵本 武志(くらもと たけし)
- 山口県柳井市出身。1979年久留米大学医学部卒業。1985年山口大学大学院修了。医学博士。1995年6月蔵本ウイメンズクリニック開院。開院当時より、体外受精、顕微授精をはじめ、一般不妊治療や生殖医療の研究を広く行う。その他、不妊教室や心理面から患者様をサポートするフリートークの会も開催する。その他、国内では各学会への参加、発表、講演などを、また、国外では世界学会への参加、発表、情報交換などを行う。
- 日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医、日本生殖医学会認定生殖医療専門医、母体保護法指定医師、日本生殖医学会代議員、日本受精着床学会理事、JISART(日本生殖補助医療標準化機関)理事長、日本IVF学会常務理事、日本不妊カウンセリング学会監事、日本生殖医療支援システム研究会理事、日本産科婦人科学会福岡地方部会評議員、福岡県産婦人科医会代議員、福岡生殖医学懇話会代表世話人、福岡県産婦人科医会福岡ブロック会理事、ASRM(アメリカ生殖医学会)会員、ESHRE(ヨーロッパ生殖医学会)会員、山口大学大学院医学系研究科非常勤講師、久留米大学医学部臨床教授
スポンサーリンク
この記事へのコメントはありません。