男性不妊の基礎知識|横山 裕クリニック+泌尿器科院長の横山 裕先生に聞きました。
不妊の悩みを専門家に聞くインタビュー企画の第5弾。
最近は、不妊に関してテレビ等メディアでも取り上げる機会が増え、随分、理解や知識が広がっています。
今回は、横山 裕クリニック+泌尿器科院長の横山 裕先生に、男性不妊の種類と原因、検査方法や治療法についてお話をお伺いしました。
目次
不妊原因半分は男性にあるので、男性の早期受診・検査が治療の早道
不妊症=女性側要因というイメージはもう過去のこと。
現在では不妊原因の約半数が男性側にあると考えられています。
「男性不妊」という言葉は「聞きなれない」という方も多いのではないでしょうか。
でも今、不妊症原因の約半数が男性側にあることがわかってきました。
そのため「不妊症」と診断された時に、早い段階で男性側も受診・検査することが治療の早道と言えます。
泌尿器科で精液検査
とは言え、まずどこに行けばよいのか分からず、検査に踏み込めない方もいます。
女性側に比べると、男性不妊の専門医はまだまだ少ないのが現状です。
男性不妊の「専門外来」を掲げている医院はわずかです。
もちろん、パートナーと行くなら「婦人科」でも検査は受けられます。
でも、専門的な治療が必要になったり、「婦人科」での検査に抵抗があるという方は「泌尿器科」を受診してください。
ただし、全ての泌尿器科が男性不妊の検査を実施している訳ではありませんので、事前確認は必要です。
男性不妊の検査でまず挙げられるものは「精液検査」です。
精子数(濃度)や、運動率などを測定して、所見に異常があれば「採血」や「超音波検査」を実施します。
どれも女性側に比べると、体に負担のない検査ばかりです。
しかし、中には原因となる疾患がみつかり、手術が必要になる場合もあります。
何れにしても「不妊症」治療は、パートナーと二人で臨むものという意識を持つことが大切です。
精液検査でわかること
男性不妊の精密検査は泌尿器科で行います。
必要な検査は生殖器の視診や触診、精液検査(精液量、精子濃度、運動率を測定)、陰のう超音波検査や血液検査(ホルモンの異常や糖尿病などの基礎疾患の有無をチェック)などで、女性と比べて、身体に負担のかかるものはほとんどありません。
精液 | 1.5ml以上 |
pH | 7.2以上 |
精子濃度 | 1ml中に1,500万以上 |
総精子数 | 1ml中に3,900万以上※3,900万未満の場合は乏精子症 |
精子運動率 | 40%以上※40%未満の場合は精子無力症 |
正常形態精子率 | 4%以上※4%未満の場合は奇形精子症 |
精液検査の結果で、精子数が少ない(濃度1500万個/mL未満または総数が3900万個未満)場合を「乏精子症」、運動率が低い(総運動率が40%未満または前進精子運動率が32%未満)場合を「精子無力症」といいます。
また、精液中に精子が1個も見つからない状態を「無精子症」といいます。
「無精子症」は、精子は正常に作られているのにその通り道が塞がれている場合(閉塞性)と精巣内で精子をつくる働きが低下しているか全くない場合(非閉塞性)の2種類に大別されます。
どういった治療法があるの?
精液検査で異常があると診断された場合、女性側と同じように原因がはっきりしないことも少なくありませんが、2人に1人は「精索静脈瘤」という陰嚢内の疾患が見つかります。
精索静脈瘤は血管の病気ですので、手術が一番推奨される治療法で、手術により約70%の方で治療前と比べると精液検査の結果が改善します。(注1)
当院では局所麻酔下の顕微鏡下精索静脈瘤手術を日帰り手術として行っています。
原因が明らかでない場合、漢方やビタミンなどの薬物療法やコエンザイムQ10など抗酸化作用を持つサプリメントなどを服用してもらいますが、効果が見られる方は約半数です。
男性側の治療により精液所見が改善すれば、ステップダウンにもつながり、女性側の負担を軽減できる可能性があります。
不妊治療はパートナーと同時進行での治療が非常に効果的です。
「精液所見に異常」・・男性にとっては少し衝撃的かもしれません。
でも子どもを授かりたい希望がある場合、「パートナーと一緒に頑張る」という決意でぜひ、早めの治療を開始してください。
注1:当院では精索静脈瘤手術により、精液所見が正常化するか、運動精子数が術前と比べて2倍以上増えた症例を効果ありと判定しています。
大人になってからの「風疹」や「おたふくかぜ」は不妊の原因になるの?
おたふく風邪と呼ばれる流行性耳下腺炎はムンプスウイルスによる感染症で、男性では精巣炎を起こす可能性があります。
しかし、調査の結果、これが原因の造精機能障害は一過性のものがほとんどと考えられています。
他の一般的な感染症による高熱の場合でも1~3カ月間ほど一時的に造精機能が悪化することがあります。
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スマホでも簡易検査できる
男性不妊かも?!そんな時に活用してほしい簡易検査(キット)があります。
スマホで精子セルフチェック
不妊の原因の約半数は男性にあります。でも「いざ検査に!」となると、なかなか一歩を踏み出せない方も多いと思います。
そんな時にぜひ活用してほしいのがスマホでチェックできる簡易精液検査キットです。
「MEN S LOUPE」や「Seem」が代表的なものですが、スマホと専用キットを使って精液を観察すると精子の状態が確認できます。
しかも、専用キットはネット通販で購入できるという手軽さです。
あくまでも簡易検査ですので、治療が必要かどうかの判断は専門医での診察が必須となりますが、自身の精子の状態を簡単にチェックできる事は大きなメリットと言えます。
不妊治療はパートナー同士が協力して同時進行で行う必要があります。
「自分は大丈夫」と言う思い込みは、パートナーの負担を増やし、治療期間が長引く要因の一つになりかねません。
様々な事情で専門医を受診できないという方はぜひこれらの簡易検査を積極的に利用してください。
※上記2つはamazonにリンクしています。
年齢とともに不妊のリスクが高まるのは、男女同じ
女性は出生時にすでに卵子(原子卵胞)をもって生まれます。
そしてその後、一生を通して卵子が増えることはありません。
反面、精子は精巣内で1日に約2億個形成されていると言われています。
そのため男性の生殖能力に年齢は関係ないと思われがちですが、最近行われた調査では、男性でも加齢により精子の状態が悪くなると言う結果が報告されています。
不妊治療においては男女ともに年齢を考慮する必要があると言えそうです。
進化する男性不妊治療。無精子症でも一筋の光明!「TESE」の技術
約20年前までは「無精子症」と診断された時点で、自分の遺伝子を引き継ぐ子どもを持つことは諦めないといけませんでしたが、現在では精巣精子採取手術(TESE)という方法で精子を見つけることができれば、顕微授精により子どもができる可能性があります。
TESEは手術により精巣組織の一部を採取して、その中から顕微鏡を使って精子を探し出す方法です。
TESEによる精子採取率は、閉塞性で約95%、非閉塞性で約20?50%と言われています。「無精子症」の診断やTESEの前に必要な検査のためには男性不妊治療を専門にしている泌尿器科医への受診が重要です。
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