【漢方で妊活】不妊で悩む女性にどんな漢方が効果的?
妊活・不妊の悩みを専門家に聞く企画の第9弾。
赤ちゃんがほしいけど、病院へ行ったらいいのか、何から始めたらいいのかと迷っている方は少なくありません。昔と比べて、妊活、不妊治療の情報は、格段に増えています。
その中には、間違った知識や古い情報も多く含まれています。
これから妊活しようとしている方も、病院で不妊治療を受けている人も、正しい知識を得ること、そして自分自身の体のことをよく知ることが妊活を成功させるために必要です。
妊活や不妊治療では、漢方に注目をしているかたも多いのですが、陰陽、五行など知識が必要だったり、漢方薬には難しい名前のものが多く「どれがいいのかわからない」「使い方や自分に合ったものを知りたい」と悩みをもつ方も多いようです。今回は、妊活と漢方について、漢方薬剤師の片山智子さんに、不妊で悩む女性にどんな漢方が良いのかをお聞きしました。
目次
なぜ、不妊で悩んでいる女性に漢方がいいの?
不妊とは、赤ちゃんを授かる力「妊娠力」が、なんらかの理由で不足した状態です。
不妊に関して病院で治療できることとできないことがあります。
病院では、不妊の原因をみつけること、排卵を誘発したり受精のサポートをしたり、子宮ポリープや卵管癒着などを治療することはできますが、卵子の質を高めることや、着床しやすい子宮内環境を整えたり、女性ホルモンのバランスを整えるなど、妊娠するための力を補ってあげたり、高めてあげることはできません。
病院でできないこと、自分自身がしなければならないことをサポートする方法の1つが漢方です。
同じ「不妊」という悩みをかかえている方でも、体質は人ぞれぞれ違います。
女性が本来もっている力を整える
暑がり・寒がり、胃腸が強い・弱い、体力がある・疲れやすいなど、体質は人それぞれです。
例えば、「冷え」と一口にいっても体質によって症状や原因はさまざまです。
体質、体の状態が違えば、対応する方法も異なります。
漢方は、一人ひとりの体調や体型・体質によって、オーダーメイドのように細かく漢方を合わせることで月経など女性の体のリズムを整えたり、ホルモンの分泌を助けたり、女性がもともと持っているリズムを整えたり、妊活の敵ともいえる「冷え性」も根本的に解決していくように働きかけるため、妊娠しにくい体を妊娠しやすい体にしていくということが得意です。
月経痛や冷え症といった体質に由来する症状や、検査に表れない不調の改善をするのが漢方です。
漢方の治療は「補う方法(補法・ほほう)」と「取り去る方法(瀉法・しゃほう)」の大きく2種類があります。
妊活をしている方はもちろん、冷えなど女性ならではの悩みをお持ちの方は、まず自分の「体質」を見きわめることが、とても大切です。
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自分にあった漢方を選ぶためには体質を知ること
不妊の原因はさまざまです。なかでも子宮内膜症や卵巣チョコレート嚢胞、多嚢胞性卵巣症候群などの病名は、よく知られるようになりました。これらの疾患が卵巣機能の低下や着床障害につながり、不妊症と診断されます。
ここでは、不妊症の女性に多い6つの体質について漢方の観点から解説します。
いくつかの体質を合わせもった方もいらっしゃいますが、ご自身の傾向を知っておくことは大切です。
また、それぞれの体質によって用いる漢方も違ってきます。是非チェックしてみてください。
陽気不足(ようきぶそく)
エネルギー(体の気)が不足し、体を温めるエネルギーである腎陽の機能が低下した状態です。
体温が全体的に低い
月経色は薄い赤色で水っぽい
排卵後や月経中に下痢や軟便
むくみが起こりやすい
手足や腰が冷える
血虚(けっきょ)
体に栄養と潤いを与え、妊娠に大きなかかわりのある血の量が不足したり、機能が低下した状態。
月経量が少なく日数も短い
月経後に疲れやすい
血色が悪い
子宮内膜が薄い。
気滞(きたい)
体のエネルギーである『気』のめぐりが悪くなった状態。
体温の変動が激しい
月経周期が不安定
月経前におなかの張りやイライラ、ため息、肩こり
頭痛などが起こりやすい
ストレスに弱く、情緒不安定。
瘀血(おけつ)
血のめぐりが悪くなった状態。
月経中、レバー状の塊や、粘膜のような塊が混じる
月経痛がひどい
子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫、卵管癒着などがある。
陰虚火旺(いんきょかおう)
体に必要な潤いである陰が不足した状態。
低温期の体温が高め/周期が短い
排卵が早い(生理前から10日前後)
排卵前後、オリモノが少ない、あるいは全くない
手のひら、足の裏がほてる。
痰湿(たんしつ)
体の中に、余分な水分がたまっている状態。
低温期が不安定あるいは基礎体温が一相性である
排卵前後以外でもおりものが多い
多嚢胞性卵巣症候群といわれている。
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不妊症を月経の周期で対処する周期療法
月経周期の中で、女性の体は変化していきます。
その変化にともなって体の能力をバックアップしていくのが周期療法です。
月経周期を「(1)月経期 (2)卵胞期 (3)排卵期 (4)黄体期」と4つの時期に分けて考えます。
1)月経期
不要になった子宮内膜や月経血を排出するために活血化瘀剤を使用します。
(2)卵胞期
卵胞の成熟をうながしていくために補腎養血薬を使用します。
(3)排卵期
卵子がスムーズに排出され、卵胞を黄体化させるために理気活血剤補腎薬を集中的に使用します。
(4)黄体期
子宮内膜の分泌を促進し、受精卵が着床しやすくするために補腎薬補血 補気薬を使用します。
症状別にみるおすすめの漢方は
卵巣機能低下
近年は、女性の社会進出、キャリア化で妊娠を希望する年齢が高齢化しています。
しかし卵巣機能は35歳前後から、徐々に低下し始めるため、いざ妊娠を希望した時に、卵巣機能の低下や卵の老化によって妊娠しずらくなっているという方が増えています。
また若い方でも卵巣膿腫の手術等で卵巣機能が低下してしまった方や、元々機能が低い方もいらっしゃいます。
卵巣機能や生殖機能の低下した状態は中医学では腎虚と言います。
鹿茸、海馬、などが配合された補腎剤を服用することで、生殖機能を改善し、妊娠しやすい身体へと導きます。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、月経が不規則と感じる場合に発症していることが多いです。
それ以外にも、ホルモンの異常として男性ホルモンの増加などが見られます。
毎月の排卵が何らかの原因でうまく行われない状態の総称を「排卵障害」と呼びます。
多嚢胞性卵巣症候群もその1つで、「卵胞は育つのに、未熟なものが多く、排卵が遅れたり、排卵しても妊娠しづらい」など、不妊症の原因にもなるものです。
長期間放置せず、早めに専門医や薬剤師に相談することが大切です。
なごみ堂でも、卵巣機能低下に次いで、ご相談件数の多い症状です。
痰湿を取り除き、血液の流れを良くする化痰剤、活血剤等をその方の身体の状況に合わせて服用いただきます。
徐々に身体があたたまり、基礎体温のギザギザも穏やかな2層となり、妊娠しやすい体質へと導いていきます
不育症、着床障害
妊娠はするが、流産を繰り返すという方は、「不育症」の可能性があります。
また、不妊治療により、くりかえし良好な胚を移植しているにもかかわらず妊娠しない方は、「着床障害」と考えられます。
もちろん偶発的流産(偶然、染色体異常を繰り返した状態)の可能性もありますが、子宮環境の異常も考えられます。
例えば、子宮内膜症、腺筋症、など慢性的な炎症による免疫異常、卵管水腫、血液凝固などです。
子宮内環境の改善には、状況に合わせて、着床しやすい妊娠を継続しやすい身体の状態へと導いていくための処方をします。
お血(血流障害や鬱血)を改善する活血化お剤の使用
内膜症や腺筋症などの骨盤内炎症や癒着があると思われる方には、清熱解毒剤、シベリア霊芝など、
子宮内膜症・卵巣チョコレート嚢胞
最近増加している「子宮内膜症と卵巣チョコレート嚢胞」になると、骨盤内に炎症を起こした状態となり、着床障害や不育症の原因になることがあります。
また、卵巣チョコレート嚢胞から卵巣機能の低下をおこすこともあります。
瘀血(血液の流れが悪い状態)を改善する活血化瘀剤を基本とします。
炎症を抑える清熱解毒のはたらきのある漢方と、免疫バランスを整えるシベリア霊芝などを服用頂くことで、内膜症、チョコレート嚢胞の悪化を予防し、子宮環境を整えて妊娠しやすい体質へと導きます。
「子宮腺筋症」
そしてここ最近増えている症例が「子宮腺筋症」です。
「子宮内膜症」は、子宮外の組織に子宮内膜が入り込んで増殖する病気ですが、「子宮腺筋症」は、子宮の筋肉層に子宮内膜が入って増殖する病気です。
これにより、妊娠時の着床障害に繋がると言われています。
子宮線筋症の症状は、経血の量が多いことと、月経時の痛みです。
子宮内膜症よりも痛みが強いといわれており、進行すると月経時以外でも痛みを伴い、日常生活に支障が出ることもあります。
市販薬でやりすごしてしまいがちですが、妊娠をのぞむ女性にとっては、初期段階での治療がカギとなります。
子宮腺筋症は、放置して症状が進むと治りにくく再発しやすい病気です。
なかなか妊娠しない、月経痛がひどくなったと感じた場合、早めにご相談されることをオススメします。
活血化瘀剤を中心として気血双補剤やシベリア霊芝を服用します。
黄体機能不全
基礎体温表では、高温期が短い(10日以下)、高温期と低温期の平均体温差が0.3度未満、高温期に入って体温が下がる場合は、黄体機能不全が考えられます。
黄体ホルモンが十分に分泌されていないので着床障害が起こります。
中医学では、体温が低いという症状は気の不足がかかわっていると考えます。
体を温める原動力である腎陽の働きが低下して、腎陽虚という状態になります。
腎陽虚という体質を治しておかないと、妊娠しても流産しやすい、産後の体調が悪くなるなどの併害が出てきます。
腎陽の働きを助ける漢方薬を用いて改善します。
男性の妊活にいい漢方も!
不妊といえば、女性のことというイメージがありましたが、現在では不妊原因の半数近くに男性側要因があることがわかってきました。
遠回りしないためにも、パートナーとふたりで臨むことがスタンダードになりつつあります。
なごみ堂へもご夫婦でご来店されることが増えています。
長年治療を続けているのになかなか授からないという場合、男性側の要因も考えられます。
また不妊治療を進める中で、以前は問題なく行えていた夫婦生活が、指示された日に行わなくてはいけないというプレッシャーから、勃起障害や中折れしてしまうなど、ご主人側の精神的なものからくる障害がでてきてしまうケースも多いように思います。
男性不妊の要因は、「精子が少ない」、「運動率が悪い」、「奇形率が高い」「精神的なプレッシャーによりうまく行為が行えないという」などがあります。
男性が体質や体調に合わせて漢方を選ぶことは、遠回りしないで授かる近道の1つです。
「精子が少ない」=「腎精不足」 海精宝など
「運動率が悪い」=腎気不足・瘀血痰湿 参馬補腎丸
「奇形率が高い」=腎精不足・湿熱下注 竜胆泻肝湯など
「精神的なプレッシャー」=肝気鬱血 桂枝加竜骨牡蛎湯
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不妊治療中の心のケアにも
不妊治療において、心のケアは最も大切なことといえます。
「授かりたい」という強い気持ちがあればあるほどうまくいかないときにストレスとなります。
「生理が近づくとイライラする」「妊娠判定日が近づくと不安な気持ちになる」「生理がくると気分が落ち込む」などです。
イライラや不安な気持ちから、ホルモンバランスが崩れ、ますます、不妊体質に陥る方もいらっしゃいます。
漢方の服用で精神的にリラックスしてすごせ、ギザギザだった基礎体温表もなだらかになり、綺麗な2層になり、妊娠しやすい体質へと導いていきます。
生理前にイライラする方は疏肝理気剤
不安感が強い方は安神剤などを服用
肌荒れの悩みで漢方を服用したら生理痛が改善?
生理痛や肌荒れに悩んでいらっしゃる女性は多いと思います。
この二つの疾患は全く別の原因によるものと考えがちですが、中医学的には同じと考えられています。
「漢方薬を服用したら肌荒れも自然と良くなった。」という方も多くいらっしゃいます。
また逆に、肌荒れ改善を目的とした漢方薬を服用したらいつの間にか生理痛も気にならなくなっていたという方もいます。
肌荒れも生理痛も原因は「お血」に
よるものが多いのです。
「お血」とは血流の停滞や鬱血した状態を言います。
お血が生じると生理痛や生理不順、肌荒れの原因になります。
また、お血になると組織変性や組織増殖がおこり子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣嚢腫などをひきおこし、生理痛が重症化する原因にもなります。
生理痛や肌荒れの改善のための漢方薬は「お血」の改善のための活血化お血剤が中心になります。
これらの漢方薬は子宮や骨盤内の血流を良くすることで生理痛を改善し、肌の代謝を高め肌荒れも改善します。
肌荒れや生理痛など女性の悩みや婦人科疾患と漢方が相性が良いといわれるのは、こういった面もあるかと思います。
漢方薬にも副作用はあります
一般的に、自然の生薬ですので、症状体質に合ったものを服用していればほとんど副作用の心配はありませんが、間違った使い方をすれば副作用が出ることもあります。
また、瞑眩(めんげん)反応といって、漢方を飲み始めて良くなる前段階として一時的に症状が強く感じられたり、体に溜まった毒素が出ることで発疹がでることがあります。
このような場合や副作用が疑われるときは、すぐ薬剤師にご相談することが大事です。
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